身体拘束適正化のための指針
(事業所における身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方)
第1条 一般社団法人ゆりかごからはかばまで(以下「法人」という。)は、障害者虐待防止法及び高齢者虐待防止法、 児童虐待防止法の趣旨を理解し、障がい者及び障がい児(以下「利用者」という。)に生きがいと安心、
安全を提供するという使命感を常に自覚し、利用者に寄り添った支援、福祉サービスを提供していく。
2 法人は、身体拘束防止に関し、次の方針を定めすべての職員に周知徹底する。
(1)身体拘束は廃止すべきものである
(2)身体拘束廃止に向けて常に努力する
(3)安易に「やむを得ない」で身体拘束を行わない
(4)身体拘束を許容する考え方はしない
(5)全員の強い意志で支援の本質を考えることにチャレンジする
(6)身体拘束を行わないための創意工夫を忘れない
(7)利用者の人権を最優先に考慮する
(8)福祉サービスの提供に誇りと自信を持つ
(9)身体拘束廃止に向けてありとあらゆる手段を講じる
(10)やむを得ない場合、利用者・家族に十分な説明を行って身体拘束を行う
(11)身体拘束を行った場合、常に廃止する努力を怠らず、身体拘束ゼロを目指す
(虐待防止委員会その他事業所内の組織に関する事項)
第2条 法人は、虐待防止及び身体拘束等の適正化を目的として虐待防止委員会を設置する。
2 虐待防止委員会は、年1回以上定期的に開催し次のことを検討・協議する。
(1)虐待の未然防止のために就業規則及び虐待防止対応規程を確認し、必要に応じて見直す
(2)発生した虐待や身体拘束を検証し、虐待の再発防止策の検討及び身体拘束の適切な
手続き・方法で行われているかを確認する
(3)各事業所の年間研修計画に沿った研修及び必要な教育の実施状況を確認する
3 虐待防止責任者(管理者)は、次のことを検討・協議する。
(1)各事業所の年間研修計画に沿って研修及び必要な教育を実施する
(2)日常的な支援について利用者の人権を尊重した適切な支援が行われているか確認する
(3)虐待・身体拘束等の兆候がある場合には、慎重に調査し検討及び対策を講じる
(4)虐待が発生した場合、その原因を分析し再発防止策を検討して実施する
(5)身体拘束が発生した場合、適切な手続き・方法で行われたかどうか確認する
4 虐待防止委員会は、虐待防止責任者、虐待防止受付担当者、第三者委員で構成する。
(身体拘束等の適正化のための職員研修に関する基本方針)
第3条 法人は、各事業所の年間研修計画に沿って虐待防止、身体拘束、権利擁護、
アンガーマネジメント、メンタルヘルス等に関する研修を実施、参加する。
(1)新規採用者については、入職時に研修を実施する
(2)管理者・他の職員については、年1回以上研修を実施する
(事業所で発生した身体拘束等の報告方法等のための方策に関する基本方針)
第4条 福祉サービスの提供にあたり、利用者本人の生命及身体を保護するため緊急やむ
を得ない場合を除き、身体拘束等利用者の行動を制限する行為を行わない。
(1)障害者虐待防止法等で「正当な理由なく利用者の身体を拘束すること」は身体的な
虐待に該当する行為である
具体的に以下の行為が該当する
①車いすやベッド等に縛り付ける
②手指の機能を制限するためミトン型の手袋をつける
③行動を制限するために介護衣(つなぎ服)を着させる
④支援者が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限する
⑤行動を落ち着かせるため、向精神薬を過剰に服用させる
⑥自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する
「厚生労働省の身体拘束ゼロへの手引き 2001年3月」
①徘徊しないように車いすやベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
②転落しないようにベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
③自分で降りられないようにベッドを柵(サイドレール)で囲む
④点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように四肢をひも等で縛る
⑤点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように又、皮膚を搔きむしらないように手指の
機能を制限するミトン型の手袋等をつける
⑥車いすやイスからずり落ちたり、立ち上がったりしないようにY字型抑制帯や腰ベルト、
車いすテーブルをつける
⑦立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようなイスを使用する
⑧脱衣やオムツはずしを制限するために介護衣(つなぎ服)を着せる
⑨他人への迷惑行為を防ぐためにベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る
(2)身体拘束等を行わずに支援するための3つの原則
①身体拘束を誘発する原因を探り除去する
身体拘束をやむを得ず行う場合、必ず理由や原因がある。利用者ではなく支援する側の
関わり方や環境に問題があることも少なくない。利用者の個別の理由や原因を徹底的に
探り、除去する支援が必要である。
②以下の5つの基本的な支援を実行し、不穏になられる原因を除去したり、転倒リスク等を
軽減して身体拘束によらない支援を提供する。
(ⅰ)起きる
人は座って重量が上からかかることにより覚醒する。目を開き。耳が聞こえて自分の周囲
で起きていることがわかる。これは仰臥して天井を見ていたのではわからない。
起きることは人間らしさを追求する第一歩である。
(ⅱ)食べる
食べることは人にとって楽しみ、生きがいであり、脱水予防、感染予防にもなり、点滴や
経管栄養が不要になる。食べることは支援の基本である。
(ⅲ)排泄する
なるべくトイレで排泄することを基本に、おむつを使用している人は随時交換が重要で
ある。おむつに排泄物がついたままでは気持ち悪く「おむついじり」などの行為に繋がる。
(ⅳ)清潔にする
きちんと風呂に入ることを基本に、人は皮膚が不潔であればかゆみの原因になる。
そのため大声を出したり、夜眠れずに不穏になったりする。皮膚の清潔を保つことで快適
になり周囲も支援しやすく、人間関係も良好になる。
(ⅴ)活動する(アクティビティ)
利用者の状態や生活歴に合ったよい刺激を提供することが重要である。具体的には音楽、
工芸、園芸、ゲーム、体操、家事、テレビ等が考えられる。言葉の刺激、言葉以外の刺激
もあるが、その人らしさを追求する上で心地よい刺激が必要である。
③身体拘束廃止をきっかけに「よりよい支援」の実現を目指す。
身体拘束廃止を実現していく取り組みは、事業所における支援全体の質の向上や利用者
の生活環境の改善のきっかけとなる。「身体拘束廃止」がゴールではなく、身体拘束廃止を
実現していく過程で提起される様々な課題を真摯に受け止め、よりよい支援の実現に取り
組んでいく。言葉による拘束(スピーチロック)などは、心理的虐待であり決して行わない。
(身体拘束発生時の対応に関する基本方針)
第5条 身体拘束を行わないことが原則であるが、緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には
その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要
な事項を記録する。
なお、「利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には
身体拘束が認められているが、これは「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、
かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されている場合に限る。
*緊急やむを得ない場合の対応とは、支援の工夫では十分に対処できない一時的な事態に
限定される。安易にやむを得ないとして身体拘束を行わないように慎重に判断する。
具体的には、「身体拘束ゼロへの手引き」(厚生労働省2001年3月)に基づく要件、手続きに
沿って慎重に判断する。
*ただし、肢体不自由、特に体幹機能障害がある利用者が、残存機能が活かせるよう安定した
着座姿勢を保持するための工夫の結果として、ベルト類を装着して身体を固定する行為は、
やむを得ない身体拘束ではなく、その行為を行わないことがかえって虐待に該当することに
留意する。
(1)やむを得ず身体拘束を行う場合の3要件
①切迫性
利用者又は他の利用者等の生命、身体又は権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。
「切迫性」を判断する場合には、身体拘束を行うことにより利用者の日常生活等に与える影響
を勘案し、それでもなお身体拘束を行うことが必要となる程度まで、利用者等の生命又は身体
が危険にさらされる可能性が高いことを確認する必要がある。
②非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替えする支援の方法がないこと。
「非代替性」を判断する場合には、いかなる場合でもまずは身体拘束を行わず支援するすべて
の方法の可能性を検討し、利用者等の生命又は身体を保護するという観点から他に代替手法
が存在しないことを複数の職員で確認する必要がある。また、拘束の方法も利用者の状態像等
に応じて最も制限の少ない方法を選択しなければならない。
③一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。
「一時性」を判断する場合には、利用者の状態像等に応じて必要な最も短い拘束時間を想定
する必要がある。
(2)やむを得ず身体拘束を行うときの手続き
仮に3要件を満たす場合でも以下の点に留意する。
①組織による決定と身体拘束に関する説明書等への記載
・やむを得ず身体拘束を行う時には、職員の支援会議等で組織として慎重に検討し決定する。
この場合でも委員会の議題として上げて慎重に協議するものとし、基本的には個人的判断
では行わない。
・身体拘束を行う場合には、身体拘束に関する説明書等に身体拘束の態様及び時間、緊急
やむを得ない理由を記録する。職員の支援会議等で身体拘束の原因となる状況を徹底的に
分析し、身体拘束の解消に向けた取り組み方針や目標とする解消の時期等を統一した方針
の下で決定する。ここでも、利用者個別のニーズに応じた個別の支援を検討する。
②利用者・家族への十分な説明
・身体拘束を行う場合、これらの手続きの中で利用者や家族に対して、事前に身体拘束に
関する説明書等で身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等を出来る
限り詳細に説明し、十分な理解を得る。説明は管理者もしくは準ずる者が行う。
・仮に、事前に利用者や家族に説明し理解を得ている場合でも、実際に身体拘束を行う時点
で必ず個別に説明し理解を得る。
③行政等への相談、報告
・身体拘束を行う場合、市区町村の障害者虐待防止センター等の行政に相談、報告する。
利用者への支援の中で様々な問題を事業所で抱え込まず、関係する機関と連携して支援
について様々な視点からアドバイスや情報を得る。
・行政等に報告、相談することで支援の困難な事例に取り組んで、組織的な虐待及び身体
拘束防止を推進する。
④身体拘束に関する事項の記録
・身体拘束を行った場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急
やむを得ない理由等必要事項を記録する。
・緊急やむを得ない場合に該当しないと判断された場合は、直ちに拘束を解除し利用者
及び家族等に報告し記録する。
・具体的な記録は、身体拘束に関する説明書等を使用する。記録には、日々の心身の状態
等の観察、拘束の必要性や方法に係わる再検討を行うごとに逐次その記録を加えると
ともに、それについて情報を開示し、職員間、事業所全体、家族等関係者の間で直近の
情報を共有する。また、この記録は整備し行政指導、監査においても閲覧できるようにする。
・各記録は利用者が退去等でサービスが終了した日から5年間保管する。
(3)身体拘束廃止未実施減算
・2018年度障害福祉サービス等の報酬改定で、身体拘束の適正化を図るために身体拘束等
に係る記録をしていない場合、基本報酬を減算する「身体拘束廃止未実施減算」が既に創設
されている。なお、2021年障害福祉サービス等の報酬改定で身体拘束等の適正化の更なる
推進のため、運営基準において施設、事業所が取り組むべき事項を追加するとともに、減算
要件が追加された。
*対象:生活介護、短期入所、就労継続、児童発達支援、放課後デイサービス等
・2021年度障害福祉サービス等の報酬改定で、訪問系サービスも知的障害者や精神障害者も
対象としており、身体拘束が行われることも想定されるため運営基準に「身体拘束等の禁止」
の規程を設けるとともに、「身体拘束廃止未実施減算」が創設された。
*対象:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護等
(利用者等に対する当該方針の閲覧に関する基本方針)
第6条 当該方針は、事業所内に掲示等するとともに、事業者のホームページに掲載し利用者
及び家族等、すべての職員がいつでも自由に閲覧できるようにする。
(その他身体拘束等の適正化の推進のために必要な基本方針)
第7条 身体拘束等をしない支援を提供していくために支援に関わる職員全体で、以下の点に
ついて十分議論して共通認識を持ち、拘束を無くしていくよう取り組む。
(1)マンパワーが足りないことを理由に、安易に身体拘束等を行っていないか
(2)事故発生時の法的責任問題の回避のために、安易に身体拘束等行っていないか
(3)障がい者等は転倒しやすく、転倒すれば大怪我になるという先入観だけで安易に身体
拘束等を行っていないか
(4)障がい等があるということで、安易に身体拘束等行っていないか
(5)支援の中で、本当に緊急やむを得ない場合にのみ身体拘束等を必要と判断しているか
本当に他の方法にないのか
2 身体拘束廃止をきっかけに「より良い支援」の実現を目指す。
「言葉による拘束(スピーチロック)」にも配慮して、利用者本位の真心と優しさのこもった
「より良い支援」の実現する。
附則
この方針は、令和4年4月1日より実施する。